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角川書店:死呪の島/雪富千晶紀

死呪の島

▼ P.269 ~ P.271 ▼

土曜男爵(バロン・サムディ)という名がついていながら、この国で彼にまつわる儀式は月曜に行われる。 * 儀式にあたって、呪術師はロアに憑依される信者(ウンシ)や、二つ一組の太鼓を奏でる信者、合唱をする信者をその場に呼び出していた。  * 祭司は山羊を彼のヴェヴェの上まで連れてくると、冷静な手つきで首を反らし、信者に見せつけるように屠った。用意された器になみなみと鮮血が注がれる。それをその場にいるものたちで回し飲みした。 * 太鼓のリズムは一層強く激しく場の空気を波打たせた。 * 祭壇の供物や、ヴェヴェの上に撒かれた木の実などを手当たり次第に暴食し、卑猥な言葉を叫び、タバコを吸うまねをして見せた。この憑依現象こそがバロン・サムディが呪いを作り出すことを承諾した証だった。 * 立ち並ぶ墓の中に、シルクハットを被り燕尾服に身を包んだ黒人の男が立っていた。彼はルネに鋭い瞳を向けた後、にやりと笑って踵を返し、霧の向こうへ歩き去っていく。その姿が見えなくなった瞬間、ルネは自分が祭壇に置かれたワンガの箱と見えない鎖で繋がれたのを感じた。――ワンガは自分であり、自分はワンガである。 * やがて儀式は終わり、その日からルネは呪いを解かない限り自由を与えられない<呪の奴隷>となった。作り出された<死のワンガ>は、呪いをかけられたものの傍に置かなくては意味がない。

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プロフィール

雪男

Author:雪男
Unidentified Mysterious Animal協会東京支部に所属するルポライター。記憶の一部を喪失し、「Eコース」の診療を受けつけてくれる精神クリニックを探している。

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