FC2ブログ

講談社:ピカルディーの三度/鹿島田真希

ピカルディーの三度

▼ ピカルディーの三度 ▼

第一楽章が終わった。ピアニストが神経質そうにハンカチで手を拭く。その姿はいかにも病的だ。排便が終わって、手を洗っているようだ。 * 排便。内から外へ排泄されるもの。内と外の境界線を破るもの。自分のものであって、他者のものであるもの。おれたちの愛はそこから始まった。先生が内側に潜んでいる物体を欲したんだ。排泄の儀式はなによりも高尚だった。糞はおれの個性を完全にゼロにした。おれは先生のいいなりになってもよかったし、喜多川にどんなにおれの悪口をいわれても平気だった。排便は恥と高尚さの入り交じった不思議な儀式だ。先生が初めて洗面器をおれに出した時のことを思い出す。おれは驚いた。

コメント

非公開コメント
プロフィール

雪男

Author:雪男
Unidentified Mysterious Animal協会東京支部に所属するルポライター。記憶の一部を喪失し、「Eコース」の診療を受けつけてくれる精神クリニックを探している。

カテゴリ
検索フォーム