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書肆侃侃房:あひる/今村夏子

あひる (197x290)

▼ あひる ▼

資格があれば仕事が決まる。わたしはまだ仕事をしたことがない。

「この中にのりたまがいるの?」と言って、女の子は石の置いてある場所を指差した。「そうよ。この中で眠ってるのよ」「三びきとも?」と女の子が聞いた。母は返事に詰まった。 * 「お祈りしなくちゃね」と母は言い、女の子から視線を外すと、目を閉じてお経を唱え始めた。 * あひる小屋はからっぽになった。四番目ののりたまは来なかった。

弟は、自分の知らない間に我が家が不良の溜まり場になっていたことを嘆いた。不良の溜まり場、とは元不良の弟の口から出た表現だ。 * おれの部屋の漫画が全部なくなってる、あいつら盗んで売りやがったんだ、ほかにも盗まれたものがあるはずだ、と言った。自分も同じようなことをしたことがあるから察しがつくのだ。

▼ おばあちゃんの家 ▼

おばあちゃん変わっちゃったね、とお母さんはいう。きっとさみしかったのね、と。今まで一度もしたことのない、おばあちゃんの誕生日会をしようといいだしたのは、お母さんだ。「インキョ見てきて」とか、 「これはインキョのぶんだから」とか、「インキョのご飯」とか、それがおばあちゃんの住居を指すのか、おばあちゃん本人を指すのか、お母さんのいい方はいつもあいまいだったけど、最近ではインキョという単語を口にしなくなっている。

▼ 森の兄妹 ▼

モリコが台所のテーブルを指差した。テーブルの上には、マンガ本が山積みになっていた。 * おばあさんの家にいったのは、その日が最後になった。

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プロフィール

雪男

Author:雪男
Unidentified Mysterious Animal協会東京支部に所属するルポライター。記憶の一部を喪失し、「Eコース」の診療を受けつけてくれる精神クリニックを探している。

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